特別企画 利用体験インタビュー唯一無二の救世主
「民事保全ボンド」
(オンライン取材 2021年8月)

保全事件「支払保証委託契約(ボンド)」制度とは?

本制度は、2019年7月より開始された、比較的新しい制度です。
保全事件の「仮差押え」「係争物に関する仮処分」手続きを行う際、発令の条件として裁判所から担保提供が要求されます。その際、これまでは「現金等の供託」「銀行などが発行する保証書」を担保とすることが一般的でしたが、相応の資金を要するため、仮差押えや仮処分の手続きを断念するケースがままありました。
当制度は、当初5年分の保証料のみの費用負担で、提供用担保として保険会社が保証書を発行する制度です。保険会社への担保提供も必要ありません。保証金額全額を用意する必要がなくなるため、これまで供託金準備の問題から手続きを断念していたケースについても、積極的に保全事件の「仮差押え」「係争物に関する仮処分」手続きを選択していただくことが可能になります。2020年11月からは「婚姻等に関する審判事件を本案とする仮差押え」についても対象になり、さらに対象事件が拡大しました。(引受保険会社:損害保険ジャパン株式会社)

1保全手続きは、弁護士必携の武器!60期 男性弁護士

私は、約2年前に貸金返還請求の案件で民事保全ボンドを利用しました。この制度の存在を知っていたので、ちょうど利用するのに適した案件があったため、制度の詳細をネットで検索して利用した感じです。
貸金返還請求の事件だとそもそも資力がなく、裁判に勝っても回収できないというようなケースもありますが、今回はかなり確度の高い債権があったので、仮差押えするという手続きを行いました。一度目は普通に担保を用意して仮差押えをしましたが、二度目は担保金の準備が難しく、この制度を利用しました。
実際に利用してみると手続きもスムーズで、特にオンラインで完結するというのは非常にありがたかったです。特に今はコロナの影響もあって事務局員の出勤が限られており、実際に手足を動かすのは難しい場合もありますが、この制度はそのあたりも含め、非常によい仕組みになっていると思いました。
最近は保全に不慣れな若手の方もいると聞きました。確かに保全は難しく手間もかかりますが、だからこそ専門性が高く、弁護士の価値が見いだせる分野だと思います。何か進めるときに常に頭の中にあり、必要な時には弁護士としてしっかり使いこなさなければいけない。そのうえで、実際に保全を行おうとなったときにぶつかるのが担保の問題です。依頼者の方がまとまったお金を準備できない。しかし保全で仮差押えしておかないと財産散逸のリスクがある、という案件は結構あると思うので、そのような案件の時にこの制度が選択肢として頭に浮かぶことは、弁護士としては必要な話だと思います。
まずは、こういった制度があること、そして、この制度がどんな事例で使えるのかという概要を頭に入れておき、必要な時に依頼者に提案できるよう備えておくことが必要だと思います。

2長引く事件にも安心して取り組める65期 女性弁護士

私がこの制度を利用したのは、とある離婚案件です。離婚案件ですと奥様側が担保金を用意できないというケースも多いと思いますが、今回のケースもまさにそうでした。差押えの対象が高額で依頼者が担保金を工面することができず、もしもこの制度がなければ保全手続きはできないという結論にならざるを得ませんでした。この制度があったからこそ保全手続きを利用することができ、まったく違う結論になったと言えます。今までは諦めざるを得なかった手続きが可能になったというのは、弁護士にとっても、もちろん依頼者にとっても、かなりのメリットだと思います。
せっかく時間をかけて調停をしたり、審判をしたり、訴訟をして判決をもらったりしても、取れるはずだった財産というものが散逸してしまうと、実質的にその執行ができず、掛けた時間が無意味になってしまいます。今回の事件は現在も継続していますが、制度を利用して保全手続きができたことで、依頼人としても我々代理人としても、その点については安心して進められています。
制度の使い勝手もよく、特に印象に残っているのが保証契約の証明書の件です。郵送対応となり郵便到着までタイムラグが生じるのではないかと思っていましたが、必要書類をアップロードしたらすぐにPDFを送っていただけたので非常にありがたかったです。また、比較的新しい制度ではありますが、裁判所でも問題なくスムーズに受け付けてもらえました。
利用後、制度について何度か知り合いの弁護士などと話す機会がありましたが、まだまだ制度の存在自体をご存じでない先生というのは一定程度いらっしゃるなという印象です。存在を知れば、「機会があれば使ってみたい」という方が大半の優れた制度ですので、積極的に話題にして、弁護士に広く周知されたらと思います。

3保全を諦めないための第三の選択肢62期 女性弁護士

もともとこの制度は、韓国にあったものを参考に、日本に取り入れたものです。当時の日本にはこのような仕組みがなく、私自身も保証金が用意できなくて保全を諦めるという悔しいケースを何度か経験していました。韓国の制度を知り、これはぜひ日本で作っていく必要があると思い、保険PTとして検討段階から関わらせていただきました。
実際に韓国にも足を運び、現地の法制度も学びました。弾丸で行ったため体力的にもきつかったですし、報告書の作成などには苦労もしましたが、他国の制度を見るというのはなかなかない機会でしたので、身近に感じられて非常に勉強になりました。韓国の法制度は当時でもかなり電子化が進んでいて、そちらにも感銘を受けたのを覚えています。
日本での制度が確立したのち、私自身も離婚事件でこの制度を利用しました。財産分与が激しく問題になっており、向こうはその財産を移動させる気が満々。しかもこちらは、離婚で財産が全部向こうにあるので保証金が用意できないという、まさしくこの制度にマッチした案件でした。実際、保全し終わった後にそれ以外の財産を全部どこかにやっていたので、保全というカードが切れていなければ回収は絶望的だったと思います。その後もずっと事件は継続していますが、ご本人も安心して続けることができているというのは本当に良かったと思います。希望額まで保全することができたのは、まさにこの制度のおかげなので何度も感謝されており、依頼人との関係構築にも一役買うことができる制度だと思います。また、今回の案件はまだ続いていますが、保全をすることによって早期の解決につながるという側面もあると思います。
これまでは供託金をキャッシュで積むか諦めるかのほぼ二択だった保全手続きですが、この制度を利用することで保全ができる可能性がぐっと広がったということを、多くの弁護士に広く知っていただきたいです。

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座談会「弁護士の妻は語る」 インタビュー
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