従来、権利保護保険(弁護士費用保険)としては、自動車事故・原付事故のみを対象とする保険商品が殆どでしたが、この度、損保ジャパン社より、被害事故等の日常生活における法的トラブルに巻き込まれた場合に広く補償される新商品「弁護のちから」が発売されました。各組合員におかれても、今後、事件処理の上でこのような保険商品を利用したり、顧問先企業等から質問を受けたりする機会が増えることと思われますので、留意すべき事項等について、次のとおり、ご案内申し上げます。
なお、本商品は、企業が福利厚生制度として従業員向けに団体契約※で加入している傷害保険、医療保険に付帯する専用の特約で、本商品単独では加入できないとのことです。詳しくは、損保会社へお問合せください。 (※)加入者10名以上必要
1「弁護のちから」で補償される6つの法的トラブル(国内法に基づき解決する紛争に限る)
被保険者が以下の6つの法的トラブルについて(6はオプションの特約セットされている場合のみ対象)、弁護士への法律相談または委任を行った場合に負担する費用(法律相談費用・弁護士委任費用)に対して保険金が支払われます。
補償対象となる法的トラブル
(保険金請求者)
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1
- 被害事故に関するトラブル (被害者本人*1)
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概要
ケガを負わされた、財物を壊された、盗まれた、詐取にあった、等の被害を被ったことによるトラブル
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2
- 人格権侵害に関するトラブル(被害者本人*1)
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概要
不当な身体の拘束による自由の侵害、名誉き損、プライバシーの侵害、痴漢、ストーカー行為、いじめまたは嫌がらせにより、精神的苦痛を被ったことによるトラブル
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3
- 借地または借家に関するトラブル(借地人・借家人本人*1)
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概要
賃借している土地または建物に関する地代、賃料、敷金、礼金、契約期間等の契約に関する地主または家主とのトラブル
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4
- 遺産分割調停に関するトラブル(注1)(相続権者本人*2)
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概要
他の相続人との間の遺産分割または遺留分減殺請求に関して調停や訴訟になったトラブル
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5
- 離婚調停に関するトラブル(注2)(離婚調停申立人本人*2)
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概要
婚姻関係の解消のため調停や訴訟になったトラブル
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6
- 労働に関するトラブル(被雇用者本人*1)
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概要
賃金不払もしくは減額、解雇、退職勧奨、人事異動、時間外労働、労働災害、職場におけるいじめもしくは嫌がらせによる精神的苦痛、採用取消またはその他労働条件に関するトラブル
- (注1)遺産分割調停に関するトラブルは、遺産分割等について調停等になった場合に保険金が支払われます。遺言無効確認訴訟単独では補償対象となりません。
- (注2)離婚調停に関するトラブルは、離婚調停を対象としており、養育費請求調停や面会交流調停の単独での申し立ては対象外となります。なお、離婚調停に関連した養育費請求調停や面会交流調停も含まれますが、離婚成立後の養育費請求調停や面会交流調停は対象になりません。
- ※1・・・1、2、3、6のトラブルは、被保険者を親権者とする未成年かつ未婚の子が被った場合も補償対象となります。
- ※2・・・2、5のトラブルは、原因事故が初年度契約の保険期間の保険始期日を含め90日経過するまでに発生した場合は、補償対象外となります。
1法律相談・事件受任時の保険加入に関する確認
一般に、利用できる損害保険に加入しているかどうか、法律相談や事件受任時の事情聴取において確認しておくことが重要ですが、「弁護のちから」は、企業が団体契約しているため、個々の被保険者は保険加入の事実を明確に認識していない可能性があります。会社で契約している保険を当該事件において利用できないか、会社の担当部署に確認するよう勧めることが考えられます。
2保険を利用する場合の注意事項
権利保護保険については、損保会社と日弁連が協定を結んで運営に当たっている商品があり、「弁護のちから」もその一つです。日弁連LAC(リーガル・アクセス・センター)が担当委員会です。
権利保護保険については、弁護士を知らない被保険者に対して、日弁連LACを介して弁護士会から弁護士を紹介する制度があり、この「弁護のちから」への対応も含め、弁護士会においてLAC案件担当者名簿を整備する等の作業が進んでいます。
被保険者は、弁護士紹介制度を利用せず、自ら弁護士を選定して依頼することも可能であり、その場合は、「選任済み案件」と呼ばれることがあります。選任済み案件であっても、所属弁護士会に権利保護保険利用について報告・書類提出等をするよう求められることがありますのでご注意ください。
権利保護保険においては、弁護士費用に関する保険金支払基準があり、その基準に適合する範囲内であれば速やかに保険金の支払いが行われます。「弁護のちから」が適用される事件の弁護士費用については、損保会社で内部基準を作っているとのことです。
権利保護保険では、タイムチャージによる弁護士費用の請求も認められていますが、「毎月、執務時間の報告書を作成して依頼者に送付すること」「一応の上限(1時間2万円+消費税の30時間分)を超える場合には予め損保会社と協議すること」これらを行わないで問題になる事案があるようですので、注意してください。
弁護士が「弁護のちから」の加入者になる場合もあります。
当協同組合の取扱商品である「弁護士傷害補償プラン」は、事務所に所属される弁護士が1名であっても加入することができ、特約として弁護士費用補償特約「弁護のちから」をセットすることが可能です。その家族(配偶者・子及び同居の親族)も、個別に被保険者として加入できます。
組合員弁護士の家族が被害事故に遭った場合等には、知り合いの弁護士に事件を依頼することが多いと思われますが、親しい仲でも金銭的な話はしにくいものです。弁護士費用は保険金支払基準の枠内であれば保険金で賄われる、と決まっていれば気兼ねなく頼めます。
なお、「弁護士傷害補償プラン」に従業員が加入すれば、傷害補償部分が労災保険の上乗せ保障となるため、手厚い福利厚生制度として評価されます。
「弁護のちから」は、企業が従業員に対する福利厚生制度として加入することを想定した商品です。
従業員が被害事故に遭った場合等、被害を受けた従業員が会社を通じてこの保険に加入していれば、弁護士に相談や事件依頼をする際に、弁護士費用の負担が軽減されます。従業員にも会社にも良いことですし、保険加入を勧めた弁護士としても、保険の対象となる事件を頼まれた場合には、弁護士費用を請求することについて一定の心配がなくなります。
組合員弁護士の顧問先や知り合いの会社に対して、この保険商品を話題にしてみてはいかがでしょうか。