新型コロナウイルスの影響で延期となっていた当研修会。
換気・座席間隔・消毒など、感染対策を整えての開催となりました。
当日の参加者約30名は、皆さん熱心にメモを取りながら講義に耳を傾けておられ、民事保全ボンドへの高い興味・関心がうかがえました。
*令和2年11月24日弁護士会館にて。
おさらいしよう!
支払保証委託契約制度(民事保全ボンド)とは?
保全事件の「仮差押え」「係争物に関する仮処分」手続きを行う際、発令の条件として裁判所から担保提供が要求されます。
その際、これまでは「現金等の供託」「銀行などが発行する保証書」を担保とすることが一般的でしたが、相応の資金を要するため、仮差押えや仮処分の手続きを断念するケースがままありました。
本制度は、2019年7月より開始された、提供用担保として保険会社が保証書を発行する制度です。
必要な費用は当初5年分の保証料のみでOK。保険会社への担保提供も必要ありません。
保証金額全額を用意する必要がなくなるため、これまで供託金準備の問題から手続きを断念していたケースについても、積極的に保全事件の「仮差押え」「係争物に関する仮処分」手続きを選択していただくことが可能になります。
2020年11月からは「婚姻等に関する審判事件を本案とする仮差押え」についても対象になり、さらに対象事件が拡大しました。
保証料
表のように、保証額に応じて保証料率が変わります。
それぞれの区分に応じた料率を保証額に乗じた結果を合算した値が保証料になります。
5年間の 保証区分 |
1円~300万円 | 300万円超 3,000万円以下 |
3,000万円超 1億円以下 |
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保証料率 | 6%最低保証料は10万円 | 4% | 2% |
民事保全手続きの有用性をより理解し、多くの組合員の方に利用していただくために、
裁判官経験のある弁護士をお迎えしての貴重な研修会を行いました。
講義内容
- 1 保全事件の種類
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- 一般事件
- 要審事件
- 2 保全事件共通の留意点
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- 管轄
- 申立書の記載事項等
- 3 仮差押
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- 申立
- 保全の必要性
- 担保
- 仮差押解放金
- 4 係争物に関する仮処分
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- 占有移転禁止仮処分
- 処分禁止仮処分
当初は若手向けを想定していた当研修会。実際は中堅以上の参加も多数あり、幅広い世代において本テーマへの関心があることがうかがえました。
講師を務めたのは、裁判官経験のある弁護士。弁護士、裁判官、双方の視点から見た民事保全申し立てにおける実務上の注意点や事例など、貴重なお話を丁寧に解説してくださいました。また、日本弁護士連合会発行の民事弁護教材「改訂民事保全」(通称「白表紙」)の有用性についてもお教えくださり、講義中に何度かデータを引用するなど、有効活用の方法を実践してくださいました。
質疑応答では「現金と保証の併用」などの質問が寄せられ、「裁判所としての受け入れ事例は非常に少ないと思われる」と、裁判官ならではの視点での回答をいただきました。
保険会社による制度の説明
民事保全ボンド制度の引受保険会社である損害保険ジャパン株式会社の担当者からは、当制度の概要や手続きの方法などについて、動画を使った分かりやすい解説が行われました。
充実の東弁協研修会に今後もご期待ください!
東弁協では、民事保全をはじめとするさまざまなテーマについて、不定期に研修会を行っています。今後も組合員のご意見をうかがいながら、有用な研修会を開催予定ですので、東弁協ウェブサイト等で情報をチェックし、積極的にご参加ください!